1. なぜAIに「うまく質問する力」が必要なのか
最近、Geminiなどの生成AIを使って文書を作る薬剤師が増えています。
しかし実際に使ってみると──
「なんだか内容が浅い」
「現場の意図が伝わらない」
「結局、自分で直した方が早い」
という声も多いのではないでしょうか。
その原因の多くは、AIの性能不足ではなく、“質問の仕方”にあります。
AIは人間の意図を読み取るわけではなく、指示された情報をもとに最も自然な文章を出すだけだからです。
つまり、薬剤師に求められるのは「AIを使いこなす技術」ではなく、
AIに正しく“問いを立てる力”=質問力です。
2. 情報提供書をAIで作る前に整理すべき3つのポイント
AIに質問する前に、まず以下の3つを整理しておくと出力精度が一気に上がります。
| 項目 | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| ① 提供目的 | 何のために伝えるか | 副作用報告、併用薬確認、服薬状況共有 |
| ② 伝えたい要点 | 医師に理解してほしい内容 | 発現時期・症状・薬歴上の変化 |
| ③ 希望するトーン | 文書の印象 | 客観的、簡潔、専門的、丁寧 |
この整理をメモしてからGeminiに入力するだけで、文章の方向性が明確になります。
3. AIに伝わる質問テンプレート3選
ここでは、薬剤師が実際に使いやすい質問文を3つ紹介します。
💬 テンプレート①:副作用報告の文案作成
「○○の副作用が疑われる患者に関して、医師に情報提供をしたいです。
薬剤師として中立的に、発現経過・対応・再投与可否などを含めた文面を作ってください。」
👉 ポイント: 「誰に」「どんな目的で」「どんな視点で」書いてほしいかを指定。
💬 テンプレート②:併用薬の相互作用確認
「○○と○○の併用に関して、医師への情報提供書を作成したいです。
薬剤師として安全性・有効性の観点から要点を整理した文面を作ってください。」
👉 ポイント: 「確認したい論点」を明確に伝えることで、AIが臨床的視点を持った文面を生成。
💬 テンプレート③:服薬フォロー結果の共有
「服薬フォローの結果を医師に共有したいです。
患者の訴え、服薬状況、対応内容を箇条書きでまとめた報告文を作成してください。」
👉 ポイント: 箇条書きや簡潔表現など、出力形式を指定すると実務で使いやすくなります。
4. よくある失敗例と改善例
| 失敗した質問 | 問題点 | 改善した質問 |
|---|---|---|
| 「医師への文書を作って」 | 目的が不明確 | 「副作用が疑われる患者の情報提供書を作って」 |
| 「丁寧な文章にして」 | 丁寧の定義が曖昧 | 「医師に提出する正式文書として、敬語かつ中立的な表現にして」 |
| 「患者の状況をまとめて」 | AIがどこまで書くか判断できない | 「患者の症状経過と服薬状況を中心に200文字程度でまとめて」 |
質問の粒度を上げることで、AIの出力も一段と現場に馴染むものになります。
5. まとめ:AIに“指示する力”が薬剤師の新しいスキル
AIはあくまで「優秀な助手」。
どんなに性能が高くても、質問が曖昧なら出力も曖昧です。
Geminiを使いこなす第一歩は、
「なにを・なぜ・どのように伝えてほしいか」を具体的に指示できること。
この質問力こそが、
“AI時代の薬剤師の専門性”を引き出す新しいスキルなのです。
💡 次回予告(中級編)
次回は「Geminiと共に作る情報提供書」と題して、
実際の入力→出力→修正プロセスを例示しながら、AIと薬剤師の“共作”方法を紹介します。

